第1回アーユルヴェーダから見た更年期
変化し続けるからだ
アーユルヴェーダにおける更年期の定義についてお伝えします。
女性は一生の間に、
・月経を迎える時期 【思春期】
・月経のある時期 【性成熟期】
・月経を終える時期 【更年期】
・月経を終えてから 【高齢期】
の4つのライフステージを経験します。
30代より自然と女性ホルモン(エストロゲン)は減少し始めますが、急激に減少するのが40代〜50代。規則的であった月経周期が不規則になり、やがて閉経を迎えます。
個人差はありますがこの閉経の時期をはさんだ前後数年ずつの約10年間(一般的に45〜55歳頃)を”更年期”といいます。
自分が変化していくことの恐怖。
変化の先が見えないことの恐怖。
漠然としたこのような気持ちはもしかしたら月経を迎える思春期も、そして妊娠出産の経験のある方は妊娠中も、経験したことがあるかもしれません。
生涯を通してダイナミックに、絶え間なく変化し続けている女性の体。その中での更年期とはどのような時期なのでしょうか?
更年期ってどんな時期?
更年期は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少することで自律神経が乱れ、実際に心身にさまざまな不調があらわれやすくなります。
ただし更年期の症状の原因には心理的な要因(仕事や家庭環境など)も関わってくるため、とても個人差が大きいのが特徴です。
- 頭痛、めまい、不眠、不安感、イライラ感、うつ、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)、動悸、寝汗・発汗、むくみ、のどの渇き、ドライアイ、吐き気、下痢・便秘、胃もたれ・胸やけ、肩こり・腰痛・背中の痛み、関節痛、しびれ、尿失禁、性交痛など
具体的な更年期の症状
これらさまざまな不調を「更年期症状」といい、仕事や家事など日常生活に支障をきたすほど重くなると「更年期障害」といいます。
ただし思春期が永遠に続かなかったように、更年期には必ず終わりがあります。
更年期と歴史エピソード
明治時代以前の和漢医学では、“女性の一生は7年ごとに変化が現れ、7歳で「腎気」が盛り上がり、女らしさを表し、14歳で「天癸※(てんぎ)」 が充満して月経が始まり、49歳になると天癸が尽き、生殖能力がなくなり、閉経を迎える”とされ、”天癸の減少が急であると、肩こり、頭痛、腰痛、冷え性などの障害が重くなる”、と言われていました。
更年期という言葉はまだなかった時代ですが、7年ごとのサイクルで女性の体の変化を捕らえており、実際に閉経に伴う症状も現在の更年期の症状と重なっています。
一方で欧米では、1940年代、更年期障害は“エストロゲン欠乏症”との概念が広まり、自然閉経を迎えたすべての女性は卵巣機能不全という病気として扱われていた時代もありました。
アーユルヴェーダにおける更年期
心身魂を対象にした医学、3000年前から続くアーユルヴェーダではこのような更年期という時期の不調を「エイジングのプロセス」と捉えています。
時の経過(=エイジング)とともに現れる心身の症状を先ずは基本的なVata(風)、Pitta(火)、Kapha(水)と呼ばれる3つのドーシャ(要素)で分類し、その人がどのような更年期の症状に悩まされているのかを判断します。
また代謝、消化力の低下、ダートウと呼ばれる体の構成要素も併せてみてゆきます。
西洋医学(現代医学)では婦人科が主に更年期医療を担当しているのに対し、アーユルヴェーダ医学※において、更年期への対処法が豊富に含まれているのはRasayana(ラサーヤナ)と呼ばれる「強壮科」と言われる部門と、Vajikarana(ヴァージカラナ)と呼ばれる「強精科」の部門です。
専門用語が多くわかりにくい感じがしますが、体も心も合わせたその全体、つまり「その人自身」を診て行くアーユルヴェーダでは、ホルモン補填だけが答えではなく、カウンセリングやライフスタイルへの言及がとても大きいのが特徴かもしれません。
ホリスティック医学ならではの大きな生命観を持つアーユルヴェーダは、もっと言うと、いかに生きるか、幸福な人生とは何か、という考え方を土台とする医療。
日本語に訳すと「Ayur=生命、Veda=智慧」という意味のアーユルヴェーダはハーブや薬草、そして食べ物をふんだんに使いながら、くらし方、生き方を丸ごとにアプローチしてゆきます。
そしてそれは、更年期を過ぎ、その先の人生のステージをも明るく照らしてくれる、太古から脈々と受け継がれた智慧でもあるのです。
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次回は「更年期かな?と思ったら」
池田 早紀さん プロフィール
- 【記事監修】
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ヤマダレディースクリニック院長 山田善之
東京医科歯科大学卒、医学博士。
西洋医学だけでなく、日本アーユルヴェーダスクールで学び東洋医学にも精通する婦人科医。
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